早川町の食文化についてご説明する前に、早川町について、おおまかにお伝えします。
●北と西は南アルプス(赤石山脈)に、東部は櫛形山系、南部を身延山地に囲まれている
●町の中央を、富士川の支流である「早川(はやかわ)」が流れている
●旧6ヶ村に36集落の集落が点在している
●人口…972人/世帯数…572戸(2021年8月1日現在)
●町全体の面積…370平方km。うち、約96%が山林の町
早川には、「これが特徴的!珍しい名物!」という郷土料理があるわけではないですが、畑や山でとれた四季折々の旬の食材を、そのときにある乾物や調味料と合わせ、工夫をして食べて来ました。その全体性が、早川の食文化の豊かさといえるのでは、と私達は考えます。
●●主食●●
米ではない。
大麦、小麦、蕎麦、アワ、ヒエ、キビ、モロコシなどの雑穀類が主食
(その他、大豆、あずき等の豆類、サツマイモ、ジャガイモ、サトイモなど芋類も良く作られてきた。)
●●粉食●●
各集落に水車小屋(つきや)があり、そこで搗いたり碾いたりして粉にして食べる。
団子、薄焼き、麺(のし入れ、そば切り)、ねりくり(かく)、かゆ
●●のし入れ●●
いわゆるほうとう。麺を打つのは子どもの仕事、という家庭も多かった。
おとしだんす、けえがらぼうとう:すいとん。粉を溶いて汁の中に入れる。
●●大麦●●
丸麦のまま食べる(今、麦ご飯として売っているのは押し麦)
水に浸してふやかし、(炊くというよりは)長時間グツグツ煮て食べる(オバク)。
ネギ味噌をつけて食べる。(茂倉では冷汁をかけることもある)
・お米は貴いもの → ムコダマシ:白いヒエ(米と思わせる)
・そば、キビ、エゴマなどは、今でも良く作られている。正月等にキビ餅にする。
●●大豆●●
味噌(自家製味噌、味付けはほぼ味噌。ネギ味噌は早川のソウルフード)
豆腐はごちそう。お祝い事やお正月等に作って食べる。豆腐小屋。
白和えは絶品。
●●保存食●●
様々なものを長期保存。
乾物:寒ざらし大根、芋茎、キッポシ、ころ柿 ※穀類、豆類、木の実類
漬物:塩漬け(ワラビ)、味噌漬け(獣肉)
燻煙:川魚、獣肉(囲炉裏の上で)
●●在来種の野菜●●
長年にわたって自家採種し作り続けて来た。また婚姻関係等で入って来た種もある。
芋:島根芋
豆:西山インゲン(ミサエマメ)
野菜:茂倉うり
※ オランドイモ(静岡から入って来たジャガイモ)在来の茶、在来ニンニクなどもある
●●狩猟採集●●
獣(イノシシ、ツキノワグマ、アナグマ、バンドリ、かつてはカモシカなど)
鳥(ヤマドリ、コジュケイ、ヤマバトなど)
川魚(ヤマメ、イワナ、カジカなど)
山菜(ワラビ、タケノコなど)
今では、タラノメ、コシアブラ、ウド他、多数採られるが、そこまで執着心はなかったのでは。
キノコ類(マツタケ、イグチ類、ミネゴシ、他多数)
ヘビ、虫(マムシ、ハチノコ、キムシなど滋養強壮、薬としての意味合いが強い)
早川では、多くの山菜が採れます。
秋にはさまざまなきのこが採集、栽培されます。
町では、下記の企業や団体が特産品を生み出しています。
●南アルプスふるさと活性化財団(麓の直売所)
白鳳味噌
生芋コンニャク
ハム、ベーコン、ウインナー類
山ぶどうワイン、ワインゼリー、山ぶどうジュース
ご当地アイス(ポポー、雨畑茶、梅、ころ柿、山ぶどう)
ナメコ(大粒ナメコは他では食べられない)
鹿肉
●早川きのこ園
しいたけ(生、乾)、ヒラタケ、クリタケ、ナメコ
山でとれたキノコ類(秋のみ)
●大島 島根芋(とうねいも)の会
島根芋(唐の芋)11月頃
島根芋の乾燥芋茎
●千須和主導会
ブルーベリー
●その他
・山蜜(日本ミツバチの蜂蜜)
・メイプルシロップ
・雨畑茶、雨畑紅茶